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虎に翼のモデル:三淵嘉子も関わった原爆裁判とその判決とは

虎に翼

朝ドラ「虎に翼」第20週「稼ぎ男に操り女?」では、ヒロインの寅子のもとに原爆の被害者が国に損害賠償を訴える案件がもちこまれます。

歴史上「原爆裁判」とよばれるできごとがモデルになっています。

原爆裁判とはどういうものなのか紹介します。

目次

ドラマ「虎に翼」の原爆裁判

第20週「稼ぎ男に操り女?」のエピソードは主に寅子とその周辺の結婚話が中心。寅子の仕事で大きな話題は原爆裁判です。

ドラマでは第二次世界大戦中に原子爆弾の被害にあった広島と長崎の被害者が国を相手に損害賠償を求める裁判を起こします。

被害者側の弁護士はかつて寅子やよねもお世話になった雲野法律事務所の雲野と岩井弁護士。

寅子はこの裁判を担当することになるのでした。

この裁判の行方はどうなるのか、気になりますね。

現実の原爆裁判はちょっと違います。

次に史実で三淵嘉子が担当した原爆裁判を紹介します。

三淵嘉子が担当した史実の原爆裁判

昭和30年(1955年)。広島と長崎の被爆者5人が大阪地方裁判所と東京地方裁判所で訴えを起こしました。

この案件は途中から東京地裁がまとめて担当することになります。

昭和35年(1960年)から昭和38(1963年)の間に9回の口頭弁論が行われました。

裁判官は異動するのでこの間、様々な裁判官が担当しました。

  • 裁判長
    第1~2回が畔上英二。3回から判決までが古関敏正。
  • 左陪審
    頻繁に交代していましたが、8回から判決までは高桑昭。
  • 右陪審
    三淵嘉子は第1回から9回結審まで担当。判決時は後任が出席しました。

三淵嘉子は最初から9回までのすべての口頭弁論関わったのは三淵嘉子だけです。その後、東京家庭裁判所に異動になったので判決を言い渡す時の右陪審の席には三淵嘉子はいませんでしたが。判決文には三淵嘉子の名前もあります。

判決は裁判長・古関敏正、左陪審・高桑昭、右陪審・三淵嘉子が相談して決めたようです。

誰がどのような意見を出し合ったのかは守秘義務もあるので公開されていません。三淵嘉子も判決を決めるときに自分が何を主張したのかは語っていません。

この問題は政治的にもかなり大きな問題です。

もしここで原爆投下は国際法違反と認め、国の賠償を命じれば、原爆を落としたアメリカの責任を追求する流れができて国際問題化する可能性もありました。

原爆裁判の判決内容

注目の判決内容は

要旨で

広島・長崎の両市に対する原子爆弾による爆撃は、無謀守都市に対する無差別爆撃として、当時の国際法からみて、違法な戦闘行為であると解するのが相当である。

出典:三淵嘉子と家庭裁判所

と述べたものの。

判決では「国内法上も国際法上も被爆者の損害賠償請求権を否定」しました。

原告の請求を棄却しました。

しかし裁判所は救済を否定したのではありません。

判決文では次のような言葉が続きます。

国が被害者全般に対する救済策を講じることができるのであって、そこに立法及び立法に基づく行政の存在理由がある

(中略)

われわれは本訴訟をみるにつけ、政治の貧困を嘆かずにはおられないのである。

出典:三淵嘉子と家庭裁判所

と締めくくっています。

古関ら裁判官は原爆の被害者救済は、民事訴訟に持ち込む以前の問題として。国の行政が行うべき当然の役目だ。それをしないのは政治の怠慢だと主張したのです。

 

裁判所は、国が裁判を起こした人に賠償金を支払うのは否定しました。それだけを見れば原告の敗訴に想えるかも知れません。

でもこの原爆裁判の判決の意味は別のところにあります。

それは都市への「原爆投下は国際法違反」とはっきり判決が出たことです。

その後。

昭和43年(1968年)。日本政府は「原子爆弾被害者に対する特別措置法」を制定。被爆者への特別手当や健康管理手当などが作られました。裁判を起こした人だけでなく、多くの被害者が対象となりました。

その後も「被爆者援護法」など様々な制度に影響を与えています。

この判決は海外でも注目され。国際司法裁判所で参照すべき判決だとされ。

「核兵器の使用、威嚇は一般的に、国際法に違反する」と認められいます。

核兵器の問題はその後もなくなっていません。でもこの原爆裁判の結果がもつ意味は大きいです。

現実の政治・外交・軍事は「力」の問題なので法だけで解決する問題ではありませんが。

今では都市への核攻撃は国際法違反という考えができています。第二次世界大戦当時に比べれば、核を使うことへの抑止力は高まっているといえます。

 

参考文献:
清水聡「三淵嘉子と家庭裁判所」日本評論社,2023年。

三淵嘉子と家庭裁判所

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