ブギウギ：松永大星のモデル 益田貞信と笠置シズ子の移籍騒動

松永大星は NHK連続テレビ小説（朝ドラ）「ブギウギ」の登場人物です。

演じるのは新納慎也 さん。

ドラマの松永大星は梅丸楽劇団の演出家。

ヒロイン・福来スズ子も憧れる存在です。でも松永はライバル会社の日宝に移籍。スズ子にも声がかかるようです。

松永大星のモデルになったのは松竹楽劇部で演出を担当した益田貞信。

ドラマ「ブギウギ」の松永大星とモデルになった益田貞信を紹介します。

 

ドラマ「ブギウギ」の松永大星とは

名前：松永大星(まつなが たいせい)
演：新納慎也

松永財閥の御曹司。
留学経験があり英語もできます。外国で音楽を学び日本に帰国。梅丸楽劇団に招かれ演出を担当しました。
大阪に視察に来てUSKにいた福来スズ子に注目。東京の梅丸楽劇団に移籍を勧めます。

 

演じるのは新納慎也さん

兵庫県神戸市出身。1975年生まれ。
ミュージカル、舞台のほかテレビドラマでも活躍。

主な出演作
連続テレビ小説初出演

NHK大河ドラマ
「真田丸」豊臣秀次
「青天を衝け」島津斉彬
「鎌倉殿の13人」阿野全成

 

モデルは益田貞信

松永大星のモデルになったのはジャズピアニストで演出家の益田貞信。

益田貞信の父は男爵で貴族院議員の益田太郎。三井物産の創業者・益田孝の次男です。益田太郎は劇作家としても活動。「太郎冠者」のペンネームで喜劇や流行歌を作りました。

明治44年（1911年）に誕生。
益田貞信は益田太郎の五男です。

海外に留学。ジャズを習いました。

日本に帰国後はジャズバンドを結成して活動していました。

昭和13年（1938年）松竹は松竹楽劇団(SGD)を創設。

益田貞信のバンド仲間・村上一徳が松竹楽劇団の責任者・大谷博の知り合いだったこともあり、益田貞信は構成・演出家として松竹楽劇団に誘われました。

貞信は父が男爵で劇作家としても有名な益田太郎冠者ということでマスコミからも注目を集めました。そのため「次郎冠者」と呼ばれました。

益田貞信は笠置シズ子の才能を認め可愛がっていました。益田貞信は当時26歳で端正な顔立ちの美男子。2歳年下の笠置シズ子は彼に恋心をいだいたといわれます。

益田貞信はアメリカの音楽を学んだジャズピアニスト。松竹楽劇団の演出や構成を任された益田貞信はアメリカ風の洗練された演出を目指しました。でも大衆化路線を目指す松竹とは方針が食い違い意見が対立。益田貞信の思う演出はなかなかできませんでした。

結局、益田貞信は松竹を去って東宝に移籍します。益田貞信は東宝系の劇場でその才能を発揮しました。

笠置シズ子の移籍事件

笠置シズ子は益田貞信から移籍の誘いを受ける

昭和14年（1939年）。益田貞信は笠置シズ子を東宝に誘いました。すでに笠置シズ子はスヰングの女王と言われ、日本でジャズを歌える数少ない歌手として人気になっていました。

益田貞信は松竹時代からシヅ子の才能を見抜いていて、ジャズを目指す益田貞信としては魅力的な人材でした。

笠置シズ子は益田貞信の誘いを受けました。益田貞信に恋心を持っていたということもあったかもしれませんが。何よりシヅ子にはお金が必要でした。というのもシヅ子の養母・亀井うめが病気になって治療費がかさんでいたのです。

シヅ子はうめが病気になる前から稼ぎの多くを亀井家に仕送りしていましたが、入院で更にお金が必要になったのです。

シヅ子は東宝の事務所に呼ばれて契約書にサイン。東宝の出した条件は月給300円。松竹の月給は200円ですから収入は一気に1.5倍になります。

松竹側が激怒、笠置シズ子は軟禁状態に

当然、それを知った松竹は激怒。シズ子は団長の大林博に呼ばれて怒られ。葉山にある大林の別荘で軟禁状態になりました。大林夫人がシズ子を監視しました。

困った笠置シズ子は服部良一に電話して相談しました。東京では他に相談できる相手がいないのです。

服部良一が動いて東宝との契約を解消

相談をうけた服部良一は「君がいなくなったら僕も作曲する対象がなくなって劇団にいる意味がなくなる。辞めるときは一緒に辞めるから、僕に任せておきたまえ」とシズ子の相談を引き受けました。

そのせいでシズ子と服部の関係が邪推され、二人は愛人関係にあるのではないかとマスコミが書きましたが。二人の関係は恋人ではありません。師弟関係であり、仕事の都合でお互いを必要としている間柄です。

服部は東宝と交渉。笠置シズ子との契約を破棄してもらうことに成功しました。服部良一は映画音楽も手掛けようとしていたので東宝を敵に回すのは避けたいと思ったかもしれませんが。弟子の危機を見逃すことはできません。

なにより服部良一の目指すジャズを表現できる歌手は笠置シズ子しかいません。手放すことはできなかったのです。

服部良一は松竹で一緒に仕事をしてジャズを目指した益田貞信がこのようなことをしたことに複雑な思いを持ったかもしれません。

益田貞信としても笠置シズ子は必要な人材でしたが。最終的には服部良一・笠置シズ子の師弟関係に勝つことはできませんでした。

松竹に残り活動を続ける

笠置シズ子は松竹に戻り服部良一の指導のもと歌手を続けることになります。

こうして世間を騒がせた笠置シズ子移籍事件が終わりました。

でも当時の芸能界では移籍はよくあることでした。松竹歌劇部も宝塚（東宝の系列）から人材を引き抜いていますし。お互い様というか、容赦ない移籍合戦が行われて業界でも問題になっていました。

やがて日本は太平洋戦争に突入。ジャズは「敵性音楽」とレッテルを貼られ、アメリカ風の音楽はできなくなります。

益田貞信の目指した舞台はできなくなってしまうのでした。

 

ドラマのシヅ子も移籍騒動に巻き込まれる？

朝ドラ「ブギウギ」でもヒロイン・福来スズ子が松永から日宝に移籍しないかと相談を受ける場面があるようです。

ドラマの中でもスズ子は松永に恋心を盛っているようです。どのような形でスズ子の移籍騒動が起こるのか注目ですね。

 

参考文献